4章までの内容の大まかなあらすじになります。

内容を思い出したい方に向けたまとめです。

ネタバレ注意

『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』は、19世紀末の東西に分断されたアルビオン王国ロンドンを舞台に、女子高生スパイたちの活動を描く劇場版シリーズである。全6章構成の本作品は、テレビシリーズ後の王位継承を巡る複雑な政治的陰謀と、スパイとしての使命に翻弄される少女たちの運命を描いている^1^9。各章は独立した物語でありながら、王国と共和国の対立、王位継承権を巡る暗闘、そしてチーム白鳩の正体露見という大きな流れの中で緊密に連携している。

第1章:スパイ狩りとビショップの運命

基本状況と任務設定

第1章では、共和国のスパイ集団である「チーム白鳩」に新たな任務が課せられる^9。19世紀末のロンドンにおいて、女王暗殺未遂事件を契機として王国側による「スパイ狩り」が激化し、共和国の諜報活動に深刻な影響を与えていた^9。この緊迫した状況下で、コントロール(共和国のスパイ組織)は王国王室に派遣しているスパイが二重スパイである可能性を懸念し始める^9

任務の第一段階として、チーム白鳩は王国により拘置所に拘束されていた古本屋店主の共和国への受け渡しを成功させる^9。アンジェ、ドロシー、ちせの連携により奪還作戦は成功を収めたが、これは序章に過ぎなかった^9

ビショップとの接触任務

コントロールの最大の懸念は、王室内に送り込んでいるスパイ、コードネーム「ビショップ」の忠誠心であった^9。ビショップは侍従長という王国の中枢に近い重要な地位にありながら共和国のスパイという二重生活を送っており、その精神的負担は計り知れないものがあった^6。コントロールは彼が二重スパイに転じた可能性を検証するため、チーム白鳩にビショップとの接触を命じる^9

第1章の核心部分は、ニューウィンザー離宮でのアンジェとビショップのチェスシーンである^6。表面的にはチェスに関する思い出話や戦況の話をしているように見えるが、その言葉の裏には鋭い探り合いが隠されていた^6。この場面にノルマンディー公が加わることで、三つ巴の緊張感が生まれ、誰がどこまで何を知っているのかという心理戦が展開される^6

嘘をつき続けることの代償

第1章の重要なテーマは「嘘をつき続けるとどうなるか」である^6。スパイとして世界を欺き続けるアンジェたちにとって、ビショップの運命は自分たちの未来を暗示するものでもあった^6。ビショップは目指す夢のために世界を欺き続けた結果、すべてを失い、「望むものが望む形で手に入るとは限らない」という教訓を残して物語から退場する^6

第2章:ケイバーライト爆弾と王室の暗雲

新兵器の脅威と窃盗事件

第2章冒頭では、共和国がケイバーライト爆弾という新型爆弾の実験に成功する^7。この爆弾は1発で戦艦1隻を消失させるほどの絶大な威力を持つ革命的な兵器であった^16。しかし、実用化された3発が何者かによって盗み出され、王国側に運び込まれてしまう^7

この事態は共和国にとって極めて深刻であった^7。獲得した軍事的優位が自らを窮地に立たせる結果となり、爆弾が王国内で炸裂すれば両国間の全面戦争は避けられない状況となった^7。チーム白鳩にはケイバーライト爆弾とその制御装置の捜索・奪還という困難な任務が課せられる^16

王位継承権者の集結と暗殺計画

第2章では、リチャード王子が新大陸から帰国し、ロンドンで凱旋パレードが行われる^7。これにより、王位継承権第一位のエドワード王子、同二位のメアリー王女、三位のリチャード王子、四位のプリンセス(シャーロット)という主要な王位継承権者がロンドンに集結することとなった^16

しかし、凱旋パレードの最中にリチャード王子が何者かによって狙撃される事件が発生する^7。リチャードは肩を負傷したものの無事であったが、王族内では次は誰が狙われるかと警戒心が高まった^7

エドワード王子の暗殺と真の黒幕

第2章の最大の転換点は、エドワード王子の暗殺である^7。式典会場である客船に仕掛けられたケイバーライト爆弾の爆発を阻止し、爆弾騒動に一応の決着がついた後、王宮に戻ったシャーロット(プリンセス)は衝撃的な事実を知ることになる^7

エドワードの死に笑みを浮かべるリチャードとの遭遇により、リチャードが一連の事件の黒幕であることが明らかになる^7。本心を隠せないと開き直ったリチャードは、ケイバーライト爆弾で船ごとメアリーを殺害しようとしたことを告白する^7。エドワードとメアリーを排除すれば、リチャードが王位継承第一位となり、女王の体調を考えると王位はすぐに手に入る計算であった^7

第3章:王位継承の混乱とチーム白鳩の敗北

葬儀と新たな権力構造

第3章は、暗殺されたエドワード王子の葬儀から始まる^3。王位継承権の序列が大きく変動し、メアリー王女が第一位、リチャード王子が第二位、プリンセスが第三位へと昇格する^3。アルビオン王国の貴族たちは、メアリーとリチャードのどちらが王位を継ぐのか、そしてノルマンディー公がどう動くのかという話題で持ち切りとなった^3

三者の思惑と政治的駆け引き

第3章の中核は、リチャード王子、ノルマンディー公、プリンセス(シャーロット)の三者による水面下での政治的駆け引きである^2。リチャード王子はプリンセスに対し、自分とノルマンディー公のどちらの側につくかを迫る^3

プリンセスの目指すのは、共和国と王国の「壁」の撤廃、貧富の格差の是正、あらゆる民族が平等になる世界への修正であった^3。しかし、リチャードはより広い視野を持ち、新大陸を治め植民地の実態を目の当たりにした経験から、変革の風を全世界に波及させる必要性を主張していた^4。リチャードが提案したのは、王政の破壊によるその実現であったが、プリンセスは一旦否定し、選択を保留する^2

メアリー王女の苦悩と接触

王位継承権第一位となったメアリー王女は、その重圧に押しつぶされ疲弊していく^3。次期王女という重責と、体罰も辞さない厳しい躾により、彼女の心は限界に達していた^4。王宮の壁を伝い逃げ出そうとしたメアリーに手を差し伸べたのは、プリンセス、ドロシー、世話係のオリヴィアだけであった^4

共和国のコントロールは王室の情勢を探るため、アンジェとドロシーをメアリーの侍女として潜入させる任務を下す^3。プリンセスはメアリーを姉のように扱い、傷ついた心に癒やしを与えていく^4。メアリーはプリンセスにとって、かつての自分(孤児の少女・アンジェが血の滲むような努力をして今のプリンセスになった)を思い出させる存在であり、放ってはおけない存在であった^4

致命的な「踏み外し」と敗北

プリンセスとチーム白鳩のメアリーとの接触は、スパイとしては正体が露見するリスクを増すだけの、すべきではない行為であった^4。この「踏み外し」が最悪の結果を招くことになる^4。メアリーが襲撃されたことで冷静さを失ったプリンセスは、メアリーの亡命を画策する^4

亡命作戦は失敗に終わり、プリンセス自身と仲間たち、メアリーの命を危険に晒しただけでなく、自分がスパイであるという最大の秘密がノルマンディー公に暴かれてしまう^4。今回初めて、チーム白鳩は完全敗北を喫することになった^2。積極的に動いていたのはリチャード王子であったが、シャーロットの甘さが隙を作り出した形となった^2

ノルマンディー公の戦略的勝利

ノルマンディー公の戦略は極めて巧妙であった^2。「メアリーを排除しようとするリチャード」と「メアリーを守ろうとするシャーロット」の両方のカードを手札に持つ彼は、リチャードがメアリーを壊そうとしたタイミングでシャーロットの隙をつくことができた^2。仮にメアリーの謀殺や亡命が成功しても、「エドワードを謀殺したリチャード」と「メアリーを逃した可能性の高いシャーロット」というカードを切ることで優位に立てる算段であった^2

第4章:二重スパイの重圧と新たな試練

捕囚と強制的な二重スパイ化

第4章は、メアリー王女の亡命に失敗し、王国内務省軍に捕らえられたチーム白鳩の状況から始まる^1。彼女たちが共和国のスパイであることを知ったノルマンディー公は、王国と共和国の二重スパイになるよう命じる^1。プリンセスだけはノルマンディー公の管理下に置かれ、アンジェ、ドロシー、ベアトリス、ちせの4人は常に監視されながら一時解放されることとなった^1

共和国側の疑念と新任務

一方、この事件を契機にチーム白鳩は共和国から二重スパイになったのではないかと疑われることになる^1。その真偽を確かめるべく、コントロールから新たな任務が下される^1。それは共和国の経済を揺るがす重要な人物への接触任務であった^1

贋札技師ターナーとの接触

新任務の標的は、贋札技師のターナーという男性であった^10。アンジェ、ドロシー、ベアトリス、ちせはとある工場への潜入を開始する^1。ターナーは革命によって祖国や妻と分断され、おそらく正規の仕事を得られなかったため、薄汚れた工場で贋札造りの中核を担うことでしか金を稼げず、その金も雇用主とチンピラから搾取されている状況であった^10

亡命への願いと生き方の制約

第4章で際立つのは「生き方を縛られる苦しみ」である^10。ターナーと接触し、王国から共和国へと連れ出せば共和国にとって利益をもたらすことは確実であったが、チーム白鳩、特にベアトリスは彼と妻を再会させたいという人道的な願いを抱く^10

主要勢力と人物関係

王国側の権力構造

ノルマンディー公は内務卿として諜報・公安・警察関係に強い影響力を持ち、「コントロール」と敵対している^14。女王にも意見できる立場にあり、プリンセスには「おじさま」と呼ばれる親戚関係にある^14。彼は国民人気の高いプリンセスを警戒し、様々な手段で監視と牽制を行っている^14

リチャード王子(アーカム公)は新大陸での経験により、世界規模での変革の必要性を認識している^4。エドワード王子とメアリー王女の排除により王位継承権第一位を狙う野心的な人物である^7

共和国側の組織

コントロールは共和国のスパイ組織で、チーム白鳩を含む多数のスパイを王国に潜入させている^14。組織内には穏健派と強硬派が存在し、政治的な思惑により作戦方針が変更されることもある^14

チーム白鳩の複雑な立場

チーム白鳩は表向きクイーンズ・メイフェア校の「博物倶楽部」に所属する女子高生だが、実際は共和国のスパイ組織である^14。しかし、プリンセス(シャーロット)は本物の王女であり、アンジェと幼少時に入れ替わったという複雑な背景を持つ^14。第4章以降、彼女たちは王国と共和国の狭間で揺れる二重スパイとして、より困難な状況に置かれることになる^1

結論

『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』各章は、王位継承を巡る政治的陰謀と、スパイとしての使命に翻弄される少女たちの成長を丁寧に描いている。第1章でのスパイの宿命、第2章での新兵器と暗殺計画、第3章での完全敗北、第4章での二重スパイとしての苦悩という流れは、キャラクターたちの内面的成長と外的状況の悪化を巧妙に組み合わせており、残る第5章、第6章への期待を高める構成となっている。特に、嘘をつき続けることの代償、生き方を縛られる苦しみ、そして理想と現実の間での選択という普遍的なテーマが、スパイアクションという枠組みの中で深く掘り下げられている点が本シリーズの大きな魅力である。